水原クマガイソウの群生地の成り立ち

乱獲や盗掘などが原因で環境省と福島県の絶滅危惧種に指定されているクマガイソウ。約3万株が自生する水原の群生地は現在、水原の自然を守る会の皆さまによって大切に保全されていますが、一体どのような経過で現在に至っているのでしょうか。過去をたどると水原の皆さまのご苦労と自然環境保護の難しさが伝わってきます。

※以下は水原の自然を守る会のガイド資料を再編集したものです。

 

昭和40年頃まで:村の萱刈場となっており、毎年上質の萱を作るため野焼きが行われていた。

昭和45~50年頃:林業振興の流れのなか杉の植林が行われる。

昭和55年頃:クマガイソウの胞子が飛来したのはおそらくこの頃と思われる。

→この地では杉の生育が悪く日照不足にならなかったこと※、周辺に動植物が住みやすいコナラの二次林が分布していったこと、クマガイソウの種子生産に関わるマルハナバチが多数生息していったことなどが群生地の礎になったと考えられている。

※クマガイソウは実生の場合、開花まで10~12年程度かかるといわれており、日照は30%位が適当とされるならば、もし杉が順調に生長すると日照不足になりクマガイソウは消滅してしまう。当地では幸いなことに杉の成長が悪かったため生き残ったということである。

平成3年頃:地域の有志がクマガイソウの群生を確認する。以降有志だけで密かに群生地の監視を続ける。

→この頃は植林した杉が成木になっていたが、林業が衰退し管理のため入山する人も少なく、キノコやワラビなどの山菜が採れる場所でもなかったため一般人もほとんど立ち入らず、人が踏み込むのに困難を極めるイバラの地となっていた。クマガイソウはこのような人から隔離された地にひっそりと自生していたのである。

→当時、クマガイソウの群生地は各地に見られたが、これらの地は一般人たちにその所在が知れわたると、乱獲・盗掘され、たちまちその姿を消してしまうという運命をたどっていた。

平成12年頃:クマガイソウ宿根の盗掘がたびたび発生する。

平成14年1月頃:個人での保護には限界があると判断。有志が福島市に保護策を緊急要望する。

平成14年3月6日:水原の自然を守る会が発足。福島市より群生地の囲い込み施設の設置費が助成される。同月、福島県のレッドデータブックの絶滅危惧種第Ⅰ類にクマガイソウがリストアップされる。

平成14年4月:群生地の土地所有者である水原生産森林組合から水原の自然を守る会へ土地が貸与される。

平成15年5月:第1回クマガイソウの里まつりが開催される。これまでの「密かな保護」から「開かれた保護」に移行する。

平成15年:福島大学の協力によりクマガイソウの生育調査が開始され、笹森山全体の自然保護が重要であると提言される。

→群生地の保全のためには、クマガイソウを守るだけではなく、クマガイソウを育んだ生き物や自然、すなわち花粉を運ぶマルハナバチ、マルハナバチの営巣場所を提供する野ネズミや野鳥(これら小動物の廃巣が営巣場所になる)、マルハナバチの餌となる蜜や花粉を提供するマルハナバチ媒花なども保全していく必要がある。

平成16年:約500株のクマガイソウ盗難事件が発覚する。これ以降は温かな見守りにより安全に保たれている。

平成17年4月:クマガイソウが福島県の特定希少野生動植物に指定される。

平成18年:これまでの保護活動に対して、福島民報社のみどりの大賞特別賞を受賞する。

平成19年:福島市の支援事業により「クマガイソウの里の植物たち」を編纂発行する。

平成20年:福島県のうつくしま、ふくしま環境顕彰を受賞する。

平成21年:福島大学の協力により現地調査が行われ、自生地保全の基本策と課題への対応策の提言がされる。同年6月に地域環境保全功労で環境大臣表彰を受賞、同年10月に福島民友社のみんゆう環境賞を受賞する。また、クマガイソウの保護観察に関わってきた水原小学校が福島県のうつくしま、ふくしま環境顕彰を受賞する。

平成23年:東日本大震災発生。現地被害はなかったが原発事故の影響からクマガイソウの里まつりは次年度に延期し、クマガイソウの里に咲く花の一般公開として開催。

平成25年:セブンイレブン記念財団の助成を受け、散策木道の全面付け替え工事を行う。

平成26年:イオン環境財団の助成を受け、ニリンソウ・ヤマブキソウ群生地内の周遊木道敷設を行う。

平成27年:クマガイソウの開花時期が大幅に早まった年。里まつりの開催時期を急遽変更して開催。

平成28年:福島県の助成を受け群生地内の杉林の全体的な間伐作業を実施。過密状況を解消した。

平成29年:地元有志からの支援を受け、保護柵の補強工事を行う。

令和元年:激甚災害に指定された台風19号により藤入川が氾濫。群生地入口木橋が倒壊流出する。同台風により山道も損壊する。

令和2年5月:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、クマガイソウの里まつりが中止される。前年に倒壊した入口木橋を福島県林業会館の助成金により復元する。同じく損壊した山道も福島県の補助金により復旧する

令和3年5月:コロナ禍のなか、感染防止対策を講じながらクマガイソウの里まつりが再開され現在に至る。

クマガイソウの群生の様子(令和元年5月撮影)