ふくしま民話茶屋の会「松川の三本杉」の民話

ふくしま民話茶屋の会(会長 渡部 八重子 様・松川町)が編集・発行した「ふくしまの民話 22話」(2013年3月1日発行・タカラ印刷株式会社)にて、松川町を舞台にした「松川の三本杉」という民話が掲載されています。

ふくしま弁を巧みに使いこなす語り部さんが、生の語りをしている様子を想像しながらご覧ください。

〇ふくしま民話茶屋の会とは:2001年に開催された「うつくしま未来博」のパビリオンの一つ、「からくり民話茶屋」に関係した福島市と伊達郡の有志で結成した会で、2002年1月に発足。ふくしま弁に誇りをもち、信達地方に生きた祖先の思いがいっぱい詰まった「民話」を語り続けています。語り部さんのふくしま弁は、生まれ、育ち、住みついた期間などで発音も言い回しも異なります。令和4年9月3日には結成20周年を記念した「ふくしま民話まつり」を福島市アクティブシニアセンター・アオウゼにて開催しました。「聞きにこらんしょ 昔話」をキャッチフレーズに、学校や学習センター、町内会に福祉施設など、民話という口承文学を広く皆様に伝えるため活動しています。

 

松川の三本杉(松川地区)

むがぁしない。西光寺が、八丁目、今の松川町、元西(もとさい:現在の本西?)というとこにあった時の話だ。
寺の敷地には千年もたった、でっかい三本の杉の木が天をつくように伸びていたんだと。この木をお住職様が金に困って、棟梁に売る算段(方法を考える)をした。
「卯月(4月)四日に切ってくだっしょ」
なんて話し合っていたんだべな。
それから夜になっと、子ども達三人して悲しそうに木の周りを巡って歩く姿を村の人が見たんだと。
三日の夜だった。乞食(こじき)親子が、この木の下でこも(粗く織ったむしろ)をかぶって寝ていたら、真夜中にさっと冷たい風が吹いたと。目がさめてみたら、目の前に立派な身なりの武士が、美しい女人を両脇にして並んで立っていたと。それが、杉の木をじっと見つめて悲しそうな顔していたんだと。
「どなた様だい」「どっからお出でなさった」
と聞いたが返事も無く、なんだか霊気が漂っているようで、ぞくぞくと鳥肌たってきたと。おっかなくなって、下を向いたら、三人はすっと消えてしまったと。
乞食はたまげてすぐ逃げ出したと。伏拝村まで(約9km)すっとんで乞食仲間に話したと。そこへ早起きの利三が聞きつけて
「大変だ。八丁目で何事か起きたか」とはねてきて、八丁目の村役(行政を行う人)の加藤紫明(江戸時代に俳諧で活躍した文化人、文政12年・1829年没、65歳)に乞食の話をしたど。その話を聞いた紫明は
「どうも寺で木を売ったらしいな。古木だから魂が宿っていて、切られたくねえんだな」
と分別(判断)したと。そこで
「村の皆が金を出し合い、買戻しをしてもらうべ」
となった。急いで金を集めて昼前にお寺に行ったら、端の木は鋸(のこぎり)が二尺(約60cm)も入っていたと。
樵(きこり)は
「古い木は、切っと水が出るのは普通だが、この木は五~六間(約9~11m)も飛び散った」
というなり、ばたっと倒れて意識をなくしてまったと。慌てて戸板にのせ手当てをしたが一週間後には亡くなったど。
木を売ることに関係した人達にも、良くねえことが起きたんだと。「木の祟りかもしんにぇな」と思って、ほれからは木の霊をあがめてお祀りすることになったんだと。

(ふくしま民話茶屋の会)

今の時代も神聖な力が宿る場所があるような気がするのです。

 

松川町の民話集