「化学研究55年の軌跡」のご紹介

松川町出身の京都大学名誉教授 齋藤 烈(いさお)先生の功績を記した作品「化学研究55年の軌跡」をご紹介いたします。

※ご紹介にあたり「CD-R付き 福島市松川町郷土史研究必携」を編集・発行された渡邉 武房 様のご協力をいただきました。ありがとうございました。

 

ご挨拶

私は昭和16年に当時の信夫郡松川町で生まれ、小学、中学、高校までは松川町で育ち、18歳で京都に移り、京都大学を卒業後は京大を基点として55年以上もの間化学の研究を行なって参りました。
専門は生物有機化学という分野ですが、研究成果が認められ、国内外の多くの学会から賞を受賞しています。例えば、2002年に日本化学会賞を受賞していますが、この賞は毎年5名のみが選ばれる最高位の賞で、歴代日本化学会賞受賞者のうち5名がノーベル賞を受賞しています。また、日本人としては数少ない米国科学振興連盟 (AAAS) フェロー授与の栄誉にも浴しております。教育分野では、高校の化学の教科書の作成に長年かかわり、編集委員長を15年以上も務めております。
これらの成果として、原著論文501報、国内著書30冊、海外著書10冊などを発表しています。その出版物の一部のリストが、この『松川町郷土史研究必携』(福島図書館研究所刊) に掲載された事は慶賀の至りで、厚く御礼を申し上げます。

今から70年以上も前、最初の“学びの舎”である松川小学校で学んだ頃は、戦後のとても貧しい時代でした。学校の教室の窓はガラスではなく障子戸だったことを覚えています。
お昼に弁当を持ってこられない子供達がおり、アメリカが見かねて粉ミルクを配給し、ジュラルミンの碗で毎回の昼食時に飲んだ記憶もあります。校門前の長い石段、広い講堂、野球をした運動場、周りの田んぼでのイナゴとりなど、昔の光景が今でも目にうかびます。
野山や神社の周りを元気に走りまわった松川町こそが私の故郷でした。
今回の刊行を機に、「研究人生55年」というタイトルの子供にも分かるファイルを作り、
松川小学校に寄贈したいと考えています。少しでも子供達に科学に興味を持ってもらえるよう勇気付け出来たらと思ったからです。
最後に、松川町の文化活動が今後益々発展する事を念願してやみません。
2022年11月1日

京都大学名誉教授・大阪大学招聘教授 齋藤 烈

齋藤 烈(いさお)先生のプロフィール

[略歴]
1941年福島市松川町本町生まれ, 1953年松川小学校卒, 1956年福島大学附属中学卒, 1959年福島県立福島高校卒, 1968年京都大学大学院工学研究科博士課程修了, 日本大学工学部教授, 京都大学名誉教授, 大阪大学産業科学研究所招聘教授. 専門は生物有機化学, ゲノム化学, 工学博士.

[職歴]
1968年度: 京都大学, 工学部, 助手.
1971年度-1972年度: エール大学博士研究員.
1987年度 – 1990 年度: 京都大学, 工学部, 助教授.
1991年度-1994年度: 京都大学, 工学部, 教授.
1995年度-2004年度: 京都大学, 工学研究科, 教授.
2005年度-2009 年度: 日本大学, 工学部, 教授.
2007年度-2009年度: 日本大学工学部工学技術研究センター長.
2011年度-2013年度:日本大学, 工学部, 上席研究員.
2011年度-2022年度: 大阪大学産業科学研究所 招聘教授.

[学協会等活動歴]
光化学協会名誉会員, 核酸化学会 (ISNAC) 栄誉評議員, 近畿科学協会, 有機合成化学協会, 日本光医学光生物学協会, 日本化学会などの理事, 評議員. 大阪市立大学理学部の外部評価委員, 日本女性科学賞選考委員, 政府機関NEDOバイオ診断ツール実用化開発事後評価分科会 委員長, 日本学術振興会特別研究員等審査委員長. 国際純正応用化学会議 (IUPAC) 日本代表委員, 米国光生物学協会 (APS) 評議員. 数種の著名海外学術雑誌の名誉編集委員. 福島県うつくしま次世代医療産業集積プロジェクト企画運営委委員. 啓林館の高校教科書の編集委員長.

[受賞歴]
1973年 日本化学会進歩賞.
1987年 日本光化学協会賞.
1988年 IUPAC フェロー.
1994年 Councilor Award of American Society for Photobiology.
2002年 日本化学会賞.
2003年 米国科学振興連盟 (AAAS) フェロー.
2007年 光化学協会功績賞.
2008年 アジアオセアニア光化学連盟APA賞.
2009年 日本光医学光生物学協会賞.
2017年 光化学協会名誉会賞.
2019年 国際核酸化学会 (ISNAC) 池原賞.